小規模事業者持続化補助金(以下、持続化補助金)は、小規模事業者が経営計画を作成し、それに基づいて行う販路開拓や業務効率化の取り組みを支援する制度です。
「どのような取り組みが対象になるのか?」「他社はどのような計画で採択されたのか?」 これから申請を考える事業者様にとって、具体的な事例を知ることは最強の攻略法となります。
本記事では、飲食、小売、サービス、製造・建設など、業種ごとの具体的な採択事例を紹介し、審査員に評価される計画書のポイントを徹底解説します。

第1章:持続化補助金とは?活用すべき理由
事例に入る前に、この補助金の本質を理解しましょう。この補助金は単に「買い物の費用」をくれるものではありません。「経営計画に基づいて、自ら創意工夫して行う販路開拓」を支援するものです。
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補助対象となる経費の例
- 機械装置等費:高性能な厨房機器、製造機械、3Dプリンターなど
- 広報費:チラシ作成、Webサイト制作、看板設置、ネット広告
- ウェブサイト関連費:ECサイト構築、予約システム導入(※上限あり)
- 店舗改装費:和式トイレの洋式化、個室の設置、陳列棚の改装
では、実際にどのようなストーリー(事業計画)が採択されているのか、業種別に見ていきましょう。
第2章:【飲食業】の採択事例
飲食業は持続化補助金の申請数が最も多い業種の一つです。「味」だけでなく「売り方」を変える取り組みが高く評価されます。
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事例1:店舗依存からの脱却!「冷凍ブランド」の立ち上げ
【事業者概要】 地方都市にある創業20年の洋食レストラン。地元客に愛されているが、コロナ禍以降、夜間の客足が戻りきらず、売上が低迷していた。
【課題】
- 店内飲食(イートイン)の売上比率が9割を占めており、環境変化に弱い。
- 高齢化する既存客に加え、若年層の新規顧客獲得ができていない。
【補助事業の計画】 看板メニューである「ハンバーグ」と「ビーフシチュー」を商品化し、テイクアウトおよびEC販売(全国発送)を開始する。
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【導入した設備・経費】
- 急速冷凍機(ブラストチラー):できたての味と食感を損なわずに冷凍するため。
- 真空包装機:商品の保存性を高め、パッケージの見栄えを良くするため。
- ECサイト構築費:自社ブランドの世界観を伝える販売ページを作成。
- パッケージデザイン費:お土産や贈答用にも使える高級感あるデザインへ刷新。
【採択のポイント】 単に「テイクアウトを始めます」ではなく、「急速冷凍機を導入することで、店舗と同じクオリティを家庭で再現できる(強みの活用)」という点が明確でした。また、商圏を近隣住民から全国へと広げる具体的な数値目標(EC売上〇〇万円増)が説得力を生みました。
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事例2:古民家カフェの「体験型観光」への転換
【事業者概要】 山間部にある古民家カフェ。ロケーションは良いが、冬場の集客に苦戦していた。
【課題】
- 冬季の売上減少。
- 単価の低いコーヒーと軽食だけでは収益性が低い。
【補助事業の計画】 カフェの敷地内にある蔵を改装し、地元の特産品を使った「味噌作り体験」や「蕎麦打ち体験」ができるワークショップスペースを整備。インバウンドや観光客をターゲットにする。
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【導入した設備・経費】
- 店舗改装費:蔵の内装工事、手洗い場の設置。
- 広報費:観光協会と連携したパンフレット作成、多言語対応のWebページ制作。
【採択のポイント】 「飲食の提供」から「体験(コト消費)の提供」へと事業領域を拡大させた点。地域の観光資源を活用することで、地域活性化への貢献もアピールできました。
第3章:【小売業】の採択事例
モノが溢れる時代、小売業では「選ばれる理由」作りが重要です。
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事例3:老舗酒屋の「サブスクリプション」導入
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【事業者概要】 商店街にある酒販店。コンビニや量販店との価格競争に巻き込まれ、利益率が低下していた。
【課題】
- 「待ちの商売」になっており、新規客が来店しにくい。
- 店主が持つ豊富な日本酒の知識が収益化できていない。
【補助事業の計画】 「店主が毎月厳選する季節の日本酒飲み比べセット」のサブスクリプション(定額制配送)サービスを開始。
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【導入した設備・経費】
- システム開発費:サブスクリプション決済機能付きのWebページ作成。
- チラシ作成・配布費:近隣エリアへのポスティングを行い、まずは地元ファンを囲い込む。
- オリジナル什器:店頭でもサブスク会員限定の試飲コーナーを設けるためのカウンター設置。
【採択のポイント】 量販店にはできない「店主の目利き(専門性)」という強みを活かし、顧客と継続的な関係を築く(LTV向上)ビジネスモデルへの転換が高く評価されました。
第4章:【サービス業】の採択事例
美容室、整体院、学習塾などのサービス業は、時間の切り売りからの脱却や、高単価化がキーワードです。
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事例4:美容室の「頭皮ケア特化」による単価アップ
【事業者概要】 住宅街の個人経営美容室。カット競争が激しく、客単価が4,000円前後で頭打ち。
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【課題】
- 長時間労働の割に利益が残らない。
- 40代以上の顧客から「髪のボリューム」に関する悩みを多く聞くようになった。
【補助事業の計画】 従来の美容室メニューに加え、高単価な「育毛・頭皮ケアコース」を新設。専門的なカウンセリングと施術を提供する。
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【導入した設備・経費】
- 機械装置等費:マイクロスコープ(頭皮診断用)、高機能スカルプケア機器。
- 看板設置費:「頭皮の悩み相談所」としての認知を広げるためのファサード改装。
- 専門家謝金:メニュー開発のための外部講師招聘。
【採択のポイント】 「何でも屋」から「特定の悩みを解決する専門店」への差別化戦略です。既存顧客のニーズ(悩み)に基づいた計画であり、実現可能性が高いと判断されました。
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事例5:学習塾の「ハイブリッド教室」化
【事業者概要】 地域密着型の学習塾。少子化による生徒数減少に加え、感染症対策での休校リスクに直面。
【課題】
- 商圏が半径2km以内に限られている。
- 教室のキャパシティ(席数)が売上の上限になっている。
【補助事業の計画】 対面授業と同時にオンライン配信を行う「ハイブリッド授業」環境を整備。遠隔地の生徒や、不登校気味の生徒の受け入れを開始する。
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【導入した設備・経費】
- 機械装置等費:高画質カメラ、大型モニター、配信用PC。
- 広報費:「自宅から参加できる進学塾」としてのWeb広告出稿。
【採択のポイント】 単なるZoom導入ではなく、「商圏の拡大」と「席数制限の打破」という経営課題をデジタル技術で解決するシナリオが明確でした。
第5章:【建設・製造業】の採択事例
BtoBがメインのこの分野では、生産性向上や新規取引先開拓が主なテーマになります。
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事例6:板金加工工場の「短納期化」プロジェクト
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【事業者概要】 金属部品の下請け加工工場。熟練職人の技術力はあるが、手作業が多く納期がかかるのがネック。
【課題】
- 短納期の注文を断ることが多く、機会損失が発生している。
- 若手社員への技術継承が難しく、生産性が上がらない。
【補助事業の計画】 最新のレーザー加工機を導入し、工程の一部を自動化。空いた時間で職人が高付加価値な試作品製作や、若手指導に注力する体制を作る。
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【導入した設備・経費】
- 機械装置等費:レーザー加工機の一部導入費用(※補助上限額に注意しつつ活用)。
- 展示会出展費:新しい加工技術をPRするための展示会ブース出展料。
【採択のポイント】 機械導入による「生産能力の向上(〇〇%アップ)」と、それによって生まれる余力を「新規開拓(展示会)」に振り向けるという、攻めの姿勢が評価されました。

第6章:採択される計画書の「共通点」と「書き方」
多くの事例を見てきましたが、採択される計画書には共通の「型」と「思考プロセス」があります。これを押さえることで、採択率は格段に上がります。
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1. 「一貫性」のストーリーがあるか
審査員は以下の流れ(ストーリー)が論理的につながっているかを見ています。
- 現状(Strength/Weakness): 自社の強み・弱みは何か?
- 機会(Opportunity): 今、市場にどんなチャンス(または脅威)があるか?
- 課題: チャンスを掴むために、今足りないものは何か?
- 解決策(補助事業): その課題を、補助金を使ってどう解決するのか?
- 効果: 解決した結果、売上はどう変化するか?
この流れが一つでも途切れていると(例:強みと関係ない事業をする、市場ニーズがないのに新商品を出す等)、不採択の原因になります。
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2. 具体的な「数値」が入っているか
「売上を頑張って上げます」ではなく、「新規顧客を月間〇〇人獲得し、客単価〇〇円を見込むことで、月商を〇〇万円アップさせる」と書く必要があります。
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3.「創意工夫」が見えるか
単なる「設備の買い替え」は対象外になりやすいです。「古くなったエアコンを買い換える」は修繕費ですが、「個室を新設し、そこに空調を導入して高単価な接待需要を取り込む」ならば販路開拓です。「新たな取り組み」であることを強調しましょう。
第7章:申請にあたっての注意点とコツ
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審査加点項目を狙う
採択確率を上げるために、以下のような「加点項目」の取得を検討しましょう。
- 賃上げ加点:事業所内の最低賃金を地域別最低賃金よりプラス30円以上にする計画。
- パワーアップ型加点:地域資源を活用するなどの特定の要件。
- 電子申請:gBizIDプライムを取得し、電子申請を行う(現在は原則必須)。
専門家の活用
商工会議所や商工会の指導員は、過去の膨大な事例を知っているプロフェッショナルです。独りよがりな計画書にならぬよう、必ず作成途中で相談し、フィードバックをもらいましょう。「様式4」という書類を発行してもらうためにも、商工会・商工会議所との連携は必須です。

まとめ:補助金は「事業を見つめ直す」最高の機会
小規模事業者持続化補助金の最大のメリットは、お金がもらえること以上に、「自社の強みや市場を見つめ直し、これからの経営戦略を真剣に考える時間が持てること」にあります。
今回ご紹介した事例は、すべて「なんとなく」ではなく「生き残るためにどう変わるべきか」を考え抜いた結果です。
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【成功へのロードマップ】
- 自社の棚卸し:自分の店、会社の「売り」は何かを書き出す。
- 顧客の声を思い出す:お客さんは何に困っているか?何を望んでいるか?
- アイデアの結合:「強み」×「顧客ニーズ」を満たすための投資(機械、広告、改装)を考える。
- 商工会議所へ相談:早めの相談が吉。
あなたの事業にも、必ず光る「強み」と、まだ見ぬ「チャンス」があるはずです。この補助金をきっかけに、事業をワンランク上のステージへ進めてみてはいかがでしょうか。
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